時間領域核磁気共鳴(TD-NMR)
概要
TD-NMR(Time Domain NMR)は、パルスNMRとも呼ばれ低磁場のNMR装置に分類されます。原子核の磁化の緩和(スピン-スピン緩和およびスピン-格子緩和)を観測し、材料の分子運動を評価できます。
試験方法と測定例
原理
原子核には核スピン由来の磁気的性質(磁気モーメント)をもっているものがあります。核スピンは静磁場中で磁場方向に整列し、エネルギー準位が分裂します(ゼーマン分裂)。この状態で、準位差に相当するエネルギー(ΔE)の電磁波(RFパルス)を照射すると、核スピンが励起されます。励起された核スピンは、時間経過とともに熱平衡状態に戻ろうとし(緩和)、磁気モーメントの減少がFID信号(Free Induction Decay)として観測されます。
FID信号からは、緩和時間(スピン-格子緩和時間(縦緩和時間:T1)およびスピン-スピン緩和時間(横緩和時間:T2))の測定が可能です。T1は系全体と核スピンの相互作用の強さ、T2は核スピン同士の相互作用の影響を受けるため、緩和時間を解析することで、材料物性や分子の運動性に関する情報を得ることが可能です。


仕様
・共鳴周波数:23.4 MHz (1H)
・測定温度 :5℃~65℃
・必要試料量:1.6 cm3
適用試料
・液体、固体(粉体、ペレット等)
・水素元素(1H)を含む化合物、ポリマーなど
用途
・ポリマー科学 :材料の硬度や柔軟性、分子運動性の評価
・食品産業 :脂肪含有、水分量、油分の品質評価
・農業分野 :種子の含水率や油分の測定
・医療品 :薬剤の結晶性や粒子サイズの評価
測定例
ポリエチレンの分子運動制評価

ポリエチレンペレットをSolid-Echo法、40℃でTD-NMR測定を行い、得られた緩和曲線を3成分に分離し、T2と存在比を算出しました。T2は分子運動性が低い(硬い)程小さくなるため、T2が小さい順から“ハード成分“ 、 “ミドル成分“ 、“ソフト成分“ としました。
結晶性高分子であるポリエチレンではハード成分は結晶相成分、ソフト成分は非晶質相成分、ミドル成分は結晶相と非晶質相の中間成分に対応するといわれており、本サンプルの結晶相成分は34%であることがわかりました。
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