リチウムイオンの拡散係数評価(PGSE-NMR法)

概要

車載用電池に求められる高い安全性、高エネルギー密度の実現に向けて、全固体電池が注目されており、リチウムイオン(Liイオン)伝導率が高い固体電解質が求められています。
Liイオンの移動速度の評価には、パルス磁場勾配核磁気共鳴(PGSE-NMR)法を用いた自己拡散係数測定が有効です。

試験方法と測定例

原理

磁場中の核スピンは磁場強度に応じた回転速度で磁場ベクトルを軸とした歳差運動をしています。静磁場中の試料に90°パルスを照射すると、核スピンは励起されて向きが揃った状態となります。核スピンが感じる磁場はそれぞれの核スピン毎に若干異なるため(磁場強度の不均一性)、歳差運動の回転速度に差が生じ、揃っていた核スピンの向きは乱れていきます。
90°パルスからτ時間後に180°パルスを照射して、核スピンの向きを反転させると、それぞれの核スピンはスピンの向きが乱れていく時と同じ速さで逆方向に回転するため核スピンの向きが収束していき、τ時間後にエコー信号を得ることができます。

PGSE-NMR法では、位置によって強度が異なる磁場(勾配磁場)を試料に加えて核スピンのエコー信号を取得します。勾配磁場中で核スピンが移動すると、核スピンが感じる磁場強度が変化するため、180°パルスの照射後に核スピンの向きは完全には収束せず、エコー信号の強度が低下します。
この強度低下の度合いは、核スピンの移動速度が速いほど大きくなるため、エコー信号の強度を測定することで、核スピンの移動速度を測ることができます。実際の実験では、次式を用いて信号強度Iの変化量とNMR条件の関係を解析することで自己拡散係数を求めます。

リチウムイオンの拡散係数評価(PGSE-NMR法):自己拡散係数計算式

特徴

  • 10-11[m2/s]オーダーの拡散係数が計測できます。
  • 温度範囲:30℃~80℃

測定例

PEOポリマーGBL溶液中のLiイオン拡散係数評価

リチウムイオンの拡散係数評価例:PEOポリマーGBL溶液中のLiイオン拡散係数評価

用途

電池材料(ポリマー電解質、電解液)中の各イオン成分の拡散係数評価

適応サンプル

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